今回、中国のZARAともいわれ、国内外問わず若者に人気の「SHEIN(シーイン)」というファッションブランドを職人目線でレビューしました。その結果、ずばり「SHEINのバッグは買わない方がいい!」という結論に至りました。
なぜ、この結論に至ったのかを説明していきます。
なぜSHEINのバッグをレビューするのか?
「安物買いの銭失い」
という「安い物は品質が劣るため、結局、高くつく」という意味のことわざがあるように、商品は安ければいい!という訳ではありません。
一番は、安く・高品質な商品です。しかし、財布やバッグなどの革製品では「高品質かどうか」については、専門知識や経験を必要とし、素人の目線では分かりにくくいのが現実です。
今回のレビューでは、そんな「安物買いの銭失い」を体験したことのある方、ファストブランドを購入して後悔したことのある方に、少しでも役立つ内容をお伝えします。
SHIENとは、どんなブランド?
SHEIN(シーイン)は2008年に創業の中国のファッションブランドです。特に若者向けの流行りの商品を手頃な価格で提供しています。インターネット上での直販を通じて世界中に商品を販売しています。
SHEINの特徴は、何といっても価格の安さです。今回レビューするバッグは、308円。このような多くの商品を素早く売り出すことで、流行に敏感な若い顧客層を獲得しています。
また、SHEINのマーケティング戦略は主にソーシャルメディアとインフルエンサーマーケティングを活用しており、InstagramやTikTokなどのSNSで商品を宣伝しています。
この戦略により、若者の間で口コミによるSHEINの情報が広がり、中国だけでなく海外でも大人気のファッションサイトと成長を遂げています。そして現在、ユニクロを超えたといわれるアパレル企業に成長しました。
今回のレビューでは、驚異の価格であるSHIENのバッグを通じ、業界の闇に踏み込んでいきます。
SHIENバッグ レビュー
改めて今回取り上げるのは、SHEINの308円という衝撃価格のショルダーバッグです。
またカラーバリエーションは、4色と多く展開しており、ファッションに敏感な若者に最適な商品となっています。
届いた商品を確認すると、第一印象はその軽さとシンプルなデザインが可愛い印象でした。しかし、素材の薄さや金具の質感からは、その低価格が如実に感じられます。
職人目線では「強度」「機能性」「素材」「作り込み」「縫製」という5つの視点でレビューしていきます。
強度(耐久性)
生地は薄く、縫製も粗い部分が見受けられます。またショルダーチェーンの金具部分がとても薄く、引きちぎれてしまいそうです。
視聴者様のコメントによると、一度外出に使用して家に帰るまでに壊れてしまったようで、強度(耐久性)には疑問符が付きます。
機能性(使いやすさ)
小さめのショルダーバッグなので、最低限のお出かけに使うような小物は入れることができそうです。基本的な機能は備えていますので、短期的な利用については問題ないかと思います。
素材(高級感)
低コストの素材が使用されており、希少性や高級感は見受けられませんでした。合皮もかなり安っぽく、まるでビニールのような素材で、価格帯を考えても首を傾げたくなるような素材です。(左の写真)
高級ブランドであれば、もっちりとした触感で、異様な光沢感はなく、引っ張っても千切れないような丈夫さがあり、何年も使用できるような丈夫さがあります(右の写真)
ショルダーに関しては、引っ張ったら千切れそうなくらいの細い、安っぽい金属です。(左の写真)
本来高級ブランドなどであれば、ショルダー部分にロゴが入っており、分厚い金具が使用されていて、引きちぎれそうな弱さは見受けられないです。(右の写真)
作りこみ(職人の技術)
通常、バッグには内装が存在します。内装を付け加えることにより、強度が増し、バッグを使っていても破れにくいようにする効果があります。しかし、このSHEINのバッグは内装は作り込まれておらず、このように金具が裏から見えてしまっています。これは我々職人がバッグを作るうえでありえない製作方法です。
縫製(縫い方)
縫い目が不均一です。職人から見ると「ありえない」作り方をしています。
具体的には、バッグを作る際にカマという目印をつけ、縫っていきます。このカマがあることで生地全体のどの部分が真ん中か一目で分かるようになり、作る際に縫いやすくなります。しかし、一般的にはカマという印が見えないように作るべきものです。SHEINの商品ではカマが見えてしまっている状態です。
安さの秘密に迫る!原価計算をしてみた!
職人目線、このSHEINのバッグはあまりにも安価なので、職人に還元されているのか不安になり、原価計算をしてみました。
材料 | 金額 |
生地 | 34円 |
金具 | 100円 |
チェーン金具 | 250円 |
裁断 | 4円 |
縫製工賃 | 40円 |
合計 | 428円 |
日本総研「アパレル生産から見たアジアの労働集約型産業の未来」より中国の工賃は日本の工賃の5分の1とあるので、縫製工賃は、日本の工賃200円÷5=40円、と算出しています。
原価の合計が428円で、SHEINの販売価格308円を超えてしまっています…(えらいこっちゃ)
なぜ定価が原価を超えているのか?
「なぜ販売価格を超えていても販売できるのか」
この問いに革職人が考察してみました。その結果、4つの理由が考えられます。
1つ目:余った生地を使用して製造している
SHEINの商品は中国製です。そのため、生産で様々なブランドの素材を使用しております。その余った生地でバッグを製造しているのではないかと考えられます。SDGsの観点ではいいことをしていますね。
2つ目:在庫が余った商品を売っている
製造してしまった商品の在庫を破棄するのはもったいないため、それらをSHEINで委託販売している可能性があります。
調べてみるとSHEINで販売していた商品と全く同じものがAmazonで売られていたため、この説は有力かと考えられます。
言ってしまえば売れ残りを売っているので、この事実を知ってしまえば買ってくれたお客様の気分が落ちてしまうでしょう…
3つ目:送料で回収している
SHEINでは2,000円分購入するまで送料が500円かかってしまうというルールがあります。
佐川急便でSHEINは送られていますが、佐川急便の送料は通常、250円です。その賃料にもかかわらず、SHEINでは500円を送料として徴収していて、250円の差があります。この250円を利用して回収しているのでは?と考えられます。
4つ目:中国が運営しているのでもしかして…
SHEINは中国の運営会社です。商品は中国で製造されて中国で発送されております。なので考えにくいですが、中国で問題になっているある地域で0円で製造されているのではないか?と考えられます。もし0円で製造すると工賃が0円になるので利益は出るようになりますが….
この考察は嘘だと信じたいですね。
以上4つの理由が販売価格を超えていても販売できる理由です。
SHEIN(シイーン)のバッグをオススメしない理由
SHEINのバッグは、流行に合わせたファッションを楽しみたい若者、アイテムを変えて、新しい気分で過ごしたい人とっては適しているかもしれません。
しかし、品質や耐久性を重視する方にはオススメできません。長く・大切に使いたい人は、他のバッグをご検討してみましょう。
もちろん値段が高い=高品質、とも限りません。偽物商品や低品質な商品であることをきちんと見抜けるような情報を発信していきます。低品質を否定しているわけではなく、低品質であることを許容することが大切だと、私たちは思っています。
新進工房の想い ~職人の価値を上げる~
今回、SHIENのバッグをレビューさせてもらい、驚いたことは販売価格でした。なぜ、こんなに安く提供できるのか。
その1つの答えが、「中国における労働コストの低さ」にあります。日本と比較して、労働コストは約5分の1とも言われています。(日本総研「アパレル生産から見たアジアの労働集約型産業の未来」参照)
これにより、SHIENのバッグは低価格であっても利益を出すことが可能になっていると考えられます。そのため、今回の商品は人権問題や環境負荷といった様々な問題を抱えながら製造されている可能性があります。
とはいえ、SHEINのバッグは、その価格を考えれば十分な価値を提供していますが、革職人としての視点から見ると、素材の質、縫製の精度、耐久性など、多くの面で改善の余地があります。
「職人の価値を向上させる」ためにも、今後も本気で商品を製作させて頂きます。
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